第137号 2015年5月
母になり
1月、3,520gの元気な男の子が生まれ、私は母になりました。
有難いことに妊娠中は悪阻など特に苦しいこともなく、夏の紅茶加工や草刈り、秋の番茶収穫や稲刈りに小麦の種まき、冬のミカン収穫や味噌仕込みなどなど仕事を続け、出産前日まであれやこれやと動き回っていた。本人は平気でも、それを見ている家族の方が気を揉んでいたと思う。
できるだけ自然なかたちで子どもを産みたいという想いから、家族に見守られながらの自宅出産。深夜に生まれたにも関わらず、家族が集まり、生まれたばかりの子を代わる代わる抱き喜んでくれ、とても幸せな出産だった。「産み方」そして「生まれ方」について考えさせられる体験だった。
初めての妊娠、わからないことばかりの中、現代社会の情報量の多さに圧倒されてしう。やるべきこと、やってはいけないこと、食事内容から運動量などなど。ただ、農家の私にとってはその殆どが当てはまらないような気がし、外部からの情報よりも自分の身体からの声に集中するように心がけた。そしてその結果が出産直前まで続いた農作業。毎日身体を動かし、3食しっかり食べ、早寝早起き。普段と変わらぬ生活だが、そのお陰か安産で産後の回復も早く、助産師さんに「あなたは放っておいても大丈夫」とのお墨付きを頂いたほど。子どもも大家族の中で見守られ、育まれ、愛情をたっぷり注がれながら日々スクスクと成長している。
私が生まれ育った中で、母親の存在がとても大きかったと母になり改めて実感している。母は小さいころから食事に気を付けてくれ、食事は玄米、野菜、みそ汁が中心。小学校に入ると周りがピンクや黄色などカラフルなお弁当を広げているのに私の弁当はいつも茶色や緑のジミ~な色合い。「今の食事があなたの身体をつくり、将来子どもを産むときに大切なのよ」と母から言われても全く理解していなかった。今になって漸くその意味を理解することができた。妊娠というと妊娠期間のみに注目しがちだが、実はそれよりずっと前の普段の食事や生活スタイルから身体の基礎づくりが始まり、それが土台になって妊娠、出産がある。今私たち母子が健康そのものであることを、母にとても感謝している。私も母になり、母が私にしてくれたように健康な身体を子どもに残してあげたいと思う。
近年、生まれて数カ月の子どもの多くに「乳児湿疹」がみられることを初めて知った。保母だった母によると以前は今程多くは無かったという。それは何故なのか。その一因は、知らぬ間に私たちの食が破壊され、多くの添加物や残留農薬などが身体の中に取り込まれ蓄積されているからではないか。食料の6割以上を輸入に依存する国のままでは健康な心身は育めないと感じる。
良い食は人間が本来持ち合わせる生まれ、成長し、生きるチカラを最大限に発揮させてくれる。日本で農業をし、安全な食を守ること。それが子ども達の未来を切り開く一助となれば。
4月末から新茶が始まり、我が子は保育園に通い始めた。仕事と育児、いかに両立させていくか。保育園に母乳を与えに通い、帰って茶の収穫をする。初めての育児にてんやわんやの忙しい日々だが、私たちの視野そして世界を広げ、新たな繋がりをもたらしてくれた我が子に感謝。楽しみながら育児をしていきたい。