第129号 2014年8月
地域の魅力
梅雨が明け、雲一つない空の下、私たちは毎日目の前の雑草と格闘している。7月末に種蒔きをした大豆畑では豆と同時期に雑草も発芽する。茶畑ではカラスウリやヤマイモの蔓、その他様々な草が茶木の間から顔を出す。みかん畑の下草も放っておけば人間よりも背高になってしまう。唯一、今年は合鴨を放った田では草取りの必要が無いけれど、合鴨のいないもう一枚の田んぼは草が繁茂してしまった。7月末から10日間ほど、海外4カ国から5人の若者達が農作業を手伝いに来てくれている。草取り作業はとにかく人海戦術。さあ、草取りの夏が始まる！
日々の忙しさの中でついつい忘れがちになることがある。それは自らの足元にあるもの。よく他から来た方々が、この地域を訪れて感激して帰っていく。そして私たち農家は感激されたことに感激するという不思議な関係にある。その地で採れた旬の野菜や山の幸にはじまり、新鮮な空気、豊かな地下水、川のせせらぎ、涼しい風、虫の鳴き声、小鳥のさえずり…、挙げはじめれば際限がない程。すべて私たち農家が日々の暮らしの中で当然のように享受しているものたちばかり。その価値すら忘れてしまう程当たり前になっているものに、訪れた人々がはしゃぎ、喜ぶ様に初めは驚き、今ではくすぐったいような、誇らしいような気持ちになる。
どんなことに対しても通ずることだと思うが、この相互刺激がとても大切だと思う。これまで気にも留めなかったことが、外からの刺激によって見えるようになったり、様々な角度から地域の魅力を考察できるようになる。日本は小さな島国でありながら、とても豊かな自然とその土地ならではの風土がある。その地域ごとの魅力はそこに生きる人々の手が加わり、豊かな文化や歴史が織りなされることで更に輝く。「私の地域の魅力は何か。」農村の荒廃や過疎化、高齢化が急速に進む今日だからこそ、そこに生きる人々がよく考えることに鍵はあるのではないか。
昨年の10月から地域の仲間たちに声を掛け、「オーガニックマーケット」を毎月第3日曜日に開催している。農村には豊かな資源や人材が多いのに反して、消費側に回るとその選択肢はとても限られていると感じてきた。特に無農薬や有機農産物や食材などが欲しくてもそれらに特化している店は殆ど皆無。けれど地域をよく見渡せば、無農薬野菜で新規就農した者、木を削って器などを作っている工芸家、養蜂家、無添加の魚加工品をつくるお店、自然食材にこだわったお菓子屋さん等、想いをもったものづくりをする方が多く存在する。その一人一人が集まり、繋がり、共有する、そして売る人も買う人も一緒になって地域の魅力を発信していく場所になればと願っている。日本の元気は地域にこそある。
