第125号 2014年4月
蠢動
春の暖かな日差しに誘われて、草木や虫、そして人間までも！自然界のあらゆる生き物がソワソワムズムズし始める春。茶畑の新芽は3月末に越冬用のコートを脱いで少しずつ伸び始め、1カ月後には新茶の収穫が始まる。大地からはヨモギや野蒜、ワラビに蕗、カラスノエンドウ、アザミ等々が顔を出す。黄緑色の若い新芽はどれも美味しく、これぞ春の醍醐味とばかりに
食いしん坊の私は今日は何を食べようかと野山を見まわす。普段は町に暮らす人々も、この時期になるとじっとしていられないのか、田舎へ車を走らせ、野山を散策している。春の陽気は体の中の眠った本能のようなものを目覚めさせる不思議な力があるのかもしれない。桜を愛でたり、春風の匂いを嗅いだり、山菜に舌鼓を打ったりと、春を体いっぱい吸い込んで、私たちの体も自然と共に季節を刻んでいくのだろう。
4月に入ると仕事は普段の数倍忙しくなる。畑では新芽が伸び出し、天気を気にしながら肥料をまいたり、草取りをする。晴耕雨読とは程遠く、雨が降ればその他の山積する作業をする。4月上旬には毎年送る新茶便りの発送を家族総出で行う。印刷された便りやチラシを折り、封筒に入れて、糊付けし、宛名を付ける。朝から晩遅くまで、まるまる2日がかりの大仕事。発送が終わると、次は4月下旬のお茶摘み交流会の準備に取り掛かる。今年で38回目となる交流会の食事は地域で取れた山菜がメインとなる。昨日も河原の土手に生える野蒜を採って来て、これもまた家族総出で野蒜の下準備をする。野蒜の根を切り落とし、泥の付いた薄皮を丁寧に剥がしていく作業はとても時間がかかり、根気も必要。近年、交流会の参加者が100人以上のため、大量の山菜が必要となる。蕗やワラビも野山を歩いて探す。ただ歩けばどこにでも生えているわけではなく、その山菜によって生えている場所が違うし、昨年は出ていても、今年も同じ場所にたくさん出ているとは限らないから難しい。作業の合間の休憩時間に畑の周りを覗いたりと、日頃から山菜が出そうな場所に目星を付けておく。春の山菜はアクが強いため、アク抜き等の手間もかかる。それでも、食べてくれる人々が喜んでくれることが何より嬉しく、準備を続ける。
一年を通じて自然の恵みや豊かさを享受しているが、春ほどその豊かさに感動し、腹を満たす時期は無いのではないか。茶畑の周りには豊かな自然が広がり、その恵みがあればこそ、私たちの無農薬・有機でのお茶づくりは可能だという事。そんなことを、当地を訪れる方々に体で感じ取っていただける交流会にしたいと切に願う。
草木が大地に根を張るように、私たち人間もそこのものを食べ、水を飲み、太陽の光を浴び、私たち自身の根っこを太く強くしていけると思う。
新芽が伸び、草木も人々も光り輝く春、是非当地を訪れてみて下さい。
