第127号 2014年6月
支え
長い長い新茶期が終わった。今年は４月の冷え込みで例年よりも新茶の収穫が10日程遅れ、収穫は5月中旬にようやく終わったものの、その後の発送作業や収穫後の茶畑管理などもずれ込み5月いっぱいまで新茶の忙しさから抜け出せずにいた。ようやく一息付けるかと思っても、そうはいかないのが自然相手の百姓仕事。季節は着実に移り変わり、決して待ってはくれない。田植えの支度、梅の収穫、小麦の収穫、そうこうしているうちに田んぼに放つ合鴨のヒナが到着する、あと数週間もすれば次は2番茶で紅茶加工が始まる。百姓仕事は何とも目まぐるしい。つい先日までの新茶期が遠い昔にさえ思えてしまう。
忙しさに流されてしまう前に、今年の新茶期をしっかり振り返りたい。この忙しい時期を乗り越えることが出来たのは、自分たちの力だけではない。4月末のお茶摘み交流会に始まり、５月上旬の収穫、中旬以降の出荷作業や、畑の草取りに至るまで多くの友人、仲間達の支えがあったからこそ乗り越えられた。
4月上旬からは香港人の友人ジョンさんが1ヶ月半に渡り助っ人として来日した。ジョンさんは昨年の新茶の時も3カ月滞在し、収穫袋を持つのはプロ農家並み。手際良く作業を進め、他の手伝いの友人達にも作業を教えてくれる。100人以上が全国から集まったお茶摘み交流会では宮城県から駆け付けてくれた長年のお茶の愛飲者である矢内さんはじめ、友人たち5人も加わり料理の準備や会場設営、鳥絞めなど生産者に交じって協力してくれたお陰で交流会を大盛況のうちに終えることができた。5月に入ると友人達が入れ替わり立ち替わり、ゴールデンウィークを返上して収穫の手伝いに来てくれた。落ち葉などが茶葉に混入しないように収穫前の落葉拾い、収穫機の後をついて茶葉がたまった袋を持ち、収穫された茶葉が天日で傷まないよう日陰に運ぶ。5月の太陽の下、大粒の汗を流しながら茶畑を飛び回る友人達の助けがあればこそ、予定通り収穫を終えることが出来た。その後もアメリカから友人が来日し、滞在中ずっと新茶の発送作業を手伝ってくれた。新茶の生産から発送までとても多くの人々に支えられ、今年も無事新茶期を終えることが出来たことへの感謝は言葉では到底言い表せない。
就農した時、農業を通して自然と人、人と人を繋ぐ仕事をしたいと思っていた。それから11年、とても多くの方々に支えられ、励まされ、教えられながら農村を舞台に交流を広げてこれた。訪れる人々が自然の中で見せる笑顔に、農村の持つ可能性と豊かさが象徴されていると感じている。農村は人が集い、共生し、維持されていく。私たちの茶づくりもちょうど小さな村のようなものなのかもしれない。様々な人々が寄り集まり、守られている。これまでいただいた協力や支援に私なりの返し方があるとしたら、それは人が自然と繋がり、人と出会い結びつく、そんな場所を守り広げていく事だと思う。応援に来てくれた友人達、そして私たちの茶を買い支えてくれる多くの皆様、ありがとうございます！
